RS232C、RS422、RS485とは ~平衡と不平衡~
目次
RS232CとRS422
RS232Cはシリアルインターフェースの標準規格として広く使われています。
伝送速度は、従来最速20Kbpsでしたが、年々技術進歩と共に高速になり 10Mbps というものも出てきています。低速側は300bps、150bps、75bps、50bps と言った所が最低速度と思われます。およそ距離15m以下で使用されています。
通信方式は全二重です。
本来は電話回線用モデム・インターフェースの規格でしたが、現在ではパソコン・モデム間の入出力インターフェースとしてだけではなく、このインターフェースをもったコンピュータ周辺装置も一般的に普及するようになりました。
そのメリットは、
[1]大容量のデータを最低3本(TxD・RxD・SG)という少ない信号線で送ることができる
[2]構造が簡単でローコスト
[3]一般的に普及しているためにアプリケーションが多い
などにあります。
RS232Cは、信号線とグランド線による不平衡伝送です。RS232Cデータラインの信号は、0V(グランド)のレベルに対して上の電圧(+3~+25V)を論理"0"、下の電圧(-3~-25V)を論理"1"と決めています。通常は±12~6Vのレベルで通信されています。
■RS232Cデータラインの信号レベル
一見便利なRS232Cにも下記のようなデメリットがあります。
[1]1:1の伝送しか出来ない
[2]通信速度が遅い
[3]伝送距離が短い
[4]ノイズに弱い
これらの欠点を改良するために作られた規格がRS422です。
RS422は平衡型のインターフェースでノイズに強く、伝送上優れた性質をもっています。
10Mbps以下(RS422も技術進歩と共に高速になり、32Mbpsと言うものも出てきています。)の伝送速度で、DTE/DCE間距離1.2km以下の伝送回路に適用されます。
通信方式は全二重です。
RS422はツイストペアの信号線2本で構成される平衡伝送が特徴です。必ず2本1組で動作しており、TTLからの"Hi"のデータは一方の信号線(TxD+)が+2~+6V、もう一方の信号線(TxD-)が0Vとなってドライバから送信され、"Lo"のデータは(TxD+)の信号線が0V、(TxD-)の信号線が+2~+6Vになって送信されます。
それを受けてレシーバは(RxD+)が(RxD-)の信号に対して相対電位差が高い場合に論理"1"、逆に低い場合に論理"0"となります。また回路端末は終端され、信号の反射を防ぎます。通常はレシーバ側のみ終端します。
■RS422平衡型インターフェース回路
■RS422の信号レベル
一般的にパソコンにはRS232Cのインターフェイスが標準ですが、伝送距離は15mとなってしまいます。そこで、RS232C⇔RS422変換器を利用して、伝送距離を1.2kmまで延ばすことができます。RS422で動作する機器をRS232Cに変換してパソコンと接続することもできます。
RS485とは
RS485は、RS422をバス用にレベルアップさせた規格です。電気的にはRS422とほとんど同じ平衡伝送です。ただ決定的に異なるのが、RS232C/RS422はポイント・ツゥ・ポイント(1:1)の伝送に適用されるのに対して、RS485はバス方式のマルチドロップ(1:32)に適用されるという点です。
通信方式としては、半二重(2線式)と、全二重(4線式)の二つの方式があります。
一般的にRS485とは2線式RS485を指すことが多いです。2線式RS485は送受信2本の通信線と、GNDの計3本で通信します。送受信線が1つなので送信か受信かどちらかしかできません。データを送っている時だけ信号ラインを占有するので複数台接続が可能になりました。
4線式RS485は送信2本と受信2本の合計4本の通信線と、GNDの計5本で通信します。送受信線は別になっているので、送信・受信は同時に行うことができます。データを送っている時だけ信号ラインを占有するので複数台接続が可能です。
■RS485の構成
※各IC間のSG(シグナルGND)は接続しますが、上図は省略してあります。
RS485は伝送路の一番遠い場所の両端に終端抵抗を入れます。従ってドライバの能力は、両端の2か所の終端抵抗を駆動出来るだけの電流容量が必要になります。また、送信を行わないときはハイ・インピーダンスになります。さらにレシーバを多数接続するために、入力インピーダンスを高くとってあります。RS485はこれらの点でRS422と電気的に違います。
ただし2線式RS485の伝送は1組のバスラインでつながっているので、ドライバは常に1箇所から送信されなければなりません。それ故、伝送路は必然的に半二重となるため、衝突防止をソフトウェアでコントロールする必要があります。
RS485ではこうした特性を踏まえたソフトウェアを用意することにより簡単なLANシステムを構成でき、RS422の持つ長距離伝送のメリットも活かされることになります。
■一般的なRS422/RS485の伝送速度と伝送距離の関係(グラフは両対数目盛り)
RS422と4線式RS485の違いについて
RS422 は、
基本1:1の2台間の通信に使用します。 マスタ側RS422からの送信のみで1:N 台の接続も可能です。 RS422は、送信データラインTXD+、TXD-はデータ存在に関わらず常にアクティブな状態を保っています。(ハイインピーダンス状態が存在せず"常に送信状態"です。 よって複数の送信端末を接続する事が許されません)
4線式RS485 は、
1:1でも1:N でもN:Mでも通信可能です。(場合により、システムとして上位概念のプロトコルを考慮する必要があります。)
4線式RS485 は、送信データラインTXD+、TXD-はデータが存在するときのみアクティブな状態になり、データが無い場合は常にハイインピーダンス状態を保ちます。 よって複数の端末を相互に接続して送信も受信も可能になります。 下図はKS-485I-RJ45W4を複数使用したマルチ接続例です。 この例では1台がホスト的な存在になります。(他の全ての送信を受信しているのが左側のものだけと判ります。)もちろんプロトコル設計次第でマルチマスタ接続を行ってもかまいません。
4線式RS485でも、1:1であれば下図のようにRS422同様の接続となり、RS422としてご使用できます。
RS232CとRS422と2線式RS485と4線式RS485の電気的特性
RS232C | RS422 | 2線式RS485 | 4線式RS485 | |
規格の範囲 | ・電気的仕様 ・ピンアサイン ・コネクタ |
・電気的仕様のみ | ・電気的仕様のみ | ・電気仕様のみ |
動作(配線方式) | 不平衡 シングルエンド |
平衡 ディファレンシャル |
平衡 ディファレンシャル |
平衡 ディファレンシャル |
通信方式 | 全2重 フルデュプレックス |
全2重 フルデュプレックス |
半2重 ハーフデュプレックス |
全2重 フルデュプレックス |
接続台数 | ポイント・ツー・ポイント (1:1) |
マルチドロップ (1:N) |
マルチドロップ (N:M) |
マルチドロップ (N:M) |
最大ケーブル長 | 15m | 1.2km | 1.2km | 1.2km |
最大速度 |
19.2kbps |
10Mbps (距離による) |
10Mbps (距離による) |
10Mbps (距離による) |
不平衡伝送/平衡伝送とノイズとの関係
[不平衡伝送方式と平衡伝送方式との違い]
RS232Cのような不平衡伝送方式では、信号線とグランドの間に共通に存在するノイズ、すなわちコモン・モード・ノイズがノーマル・モード・ノイズとして伝送信号に加算される可能性が高くなります。また信号伝送路が形成するループ面積が大きいためノイズを受け易く、信号電圧の振幅が大きいため高速の通信には向きません。このため伝送距離は大きく制限を受けます。
RS422やRS485の平衡伝送方式では、その動作が差動アンプと等価であり、信号伝送を2本の対等な信号線(ツイストペア)で行うため、2つの信号線に共通な外乱ノイズをコモン・モード・ノイズとして除去する能力があります。このため、長距離にわたる通信でもノイズの影響が低減されます。ただし、コモン・モード・ノイズと見なされるノイズレベルがレシーバの動作許容範囲を超えていれば、正しい伝送は行われません。可能な限りSG(シグナルグランド)の接続やSGでのシールドを推奨しております。
また、RS422やRS485間の2本の信号線をツイストペアで密着させることにより信号伝送路の形成するループ面積を小さくできるので、ノイズに対する影響を受けにくく、データの信頼性も高めることが可能です。信号線をツイストペア線にすることで、伝送距離を伸ばすことはRS232Cによる伝送方式でも効果的です。また、終端抵抗の値と同じ値のツイストペアシールドケーブルを用いることで、伝送時の反射を抑えることが出来ます。反射波が大きくなると通行障害を引き起こします。よって弊社では、特性インピーダンス100ΩのCAT5やCAT5E推奨しております。
■RS232Cの信号伝送路
[ノーマル・モード・ノイズ]
ノーマル・モード・ノイズは、そのノイズがシグナルと異なる周波数であれば、フィルタリングによりノイズを除去することが可能です。信号とノイズが同じ周波数帯域に存在する場合の除去は、原理的に不可能であるので、ノイズ源からの分離を行わなければならないでしょう。具体的には、信号の絶縁等の処理が考えられますが、伝送速度の低下やコストアップなどのデメリットも生じます。
なお、信号線に加算されるノイズは、RS232CでもRS422でもRS485でも等しく起こる問題です。
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